節税と貯蓄。
両立するため小規模企業共済に加入

居酒屋「侘助」オーナー 滝沢 修 氏

東京で愛され続ける居酒屋「侘助」を個人経営する滝沢氏。高校卒業後、料理への情熱を胸に調理師学校に進学し、料理人としての道を歩み始めた。新鮮な刺身から中華料理まで、幅広いジャンルのメニューが楽しめる「侘助」は、創業から変わらぬ場所で営業し、2024年6月には30周年を迎える。
小規模企業共済には約15年前に加入し、節税しながら将来のために積み立てをしている。

小規模企業共済を知ったのは経営相談がきっかけ

小規模企業共済を知ったのは、経営相談がきっかけと当時を振り返る滝沢氏。

「店舗経営の中で売上が一時的にガクッと落ちたことがあり、経営を続けていくのに大変になった時期がありました。経営相談に行って税理士さんや中小企業診断士さんに、お金もないしどうしたらいいか相談したら借り入れの話などもありましたが、これからの経営を考え、小規模企業共済という少額からでも始められる掛金で蓄えておき、必要な時に借り入れできる制度があることを聞きました。それが小規模企業共済を知ったきっかけです。」(滝沢氏)

中小機構は全国9ヶ所の地域本部で、対面またはWeb相談の形で経営アドバイスを行なっている。中小企業支援の経験豊富な税理士や企業診断士などの専門家から、問題解決に向けて対面でアドバイスをもらうほか、メール相談や経営相談ホットライン(電話経営相談)も選べる。

滝沢氏は対面の経営相談で小規模企業共済を知ったものの、すぐには加入しなかったという。その後、経営が軌道に乗りはじめお金に余裕ができたタイミングで、小規模企業共済に加入。

「やはり加入した一番の目的は税金対策です。掛金が所得控除されるということだったので。」(滝沢氏)

お金に余裕ができた時期だったため、掛金は最初から上限の70,000円を選んだそうだ。

国の機関が運営している安心感が大きかった

個人事業主が節税しながら老後資金を準備する方法はほかにもあるが、小規模企業共済に加入するにあたって他のサービスと比較したか尋ねると、次のような答えが返ってきた。

「NISAやiDeCoなどには意外と不安があるのですが、小規模企業共済に関してはほとんど不安がなかったですね。国の機関が運営しているという点で、安心感が大きかったと思います。だからほかのサービスと比較して検討することもありませんでした。」(滝沢氏)

小規模企業共済は国の機関が運営している退職金積み立て制度のため、安心感があったことも加入の決め手になったようである。加入してもうすぐ15年になる滝沢氏だが、15年の間には売上の波もあり、苦しい時期もあったという。そこで15年もの間積み立てを続けられたポイントについて伺ってみた。

「これまでに2回、掛金を1,000円に減額したことがあります。1回目は東日本大震災のとき、2回目は新型コロナウイルスの流行で飲食店が苦戦を強いられた時期です。経営状況が厳しいときは掛金を1,000円にしました。今はもう戻しています。」(滝沢氏)

小規模企業共済は、掛金の月額を1,000円~7万円までの範囲内(500円単位)で自由に設定できるので、経営状況が悪化するようなことがあっても減額すれば続けられる。掛金の納付月数が240か月を下回るタイミングで任意解約すると、解約手当金は掛金合計額を下回るため、経営状況が苦しいときは掛金を下げて継続する方がメリットが大きい。

積み立てに興味はあるものの、毎月決まった金額を積み立てられるか不安な方もいらっしゃると思うが、小規模企業共済は状況に合わせて掛金の減額や増額ができるので安心して積み立てを行うことができる。

加入して感じたメリットは税金対策が一番

小規模企業共済に加入して約15年になる滝沢氏に、実際に加入して感じたメリットを尋ねてみた。

「まずは税金対策になることです。最初から満額の掛金7万円で始めました。年間84万円の税金対策になるので。ほかには貯蓄できるところもメリットに感じます。お金は持っていると使ってしまうので、知らない間に貯蓄できるのがいいなと思いました。将来必要になる費用を貯めておきたいと思ったのも、小規模企業共済を始めた理由の一つです。」(滝沢氏)

個人事業主に退職金はないが、小規模企業共済に加入すれば、廃業後に必要な資金を蓄えておける。掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として課税対象の所得から控除可能。共済金を一括で受け取る場合はサラリーマンと同様に退職所得扱い、分割で受け取る場合は公的年金等の雑所得扱いになるため、受け取り時も税制上の優遇がある。

このように税制メリットがありながら個人事業主の廃業や、会社の解散に備えて蓄えておけることが小規模企業共済のメリットである。

「あともう一つ、経営が厳しいときに掛金に対して低金利の貸付けを受けられて助かった点がメリットです。」(滝沢氏)

小規模企業共済の契約者は、掛金の範囲内で低金利の貸付制度を利用できる。もしものときの備えとしてこちらもメリットを感じられたという。

小規模企業共済に入っていない人がいたら絶対に勧めたい

最後に小規模企業共済を知らない方や、知っていても判断に迷っている方がいたら、おすすめするか滝沢氏に尋ねてみた。

「加入していない人がいたら絶対勧めます。やはり税制メリットが大きいので、入っていない人がいた時に入った方がいいよと話したこともあります。」(滝沢氏)

小規模企業共済は、掛金の設定に柔軟性があり、変更の手続きが簡単な点も長期間継続しやすい理由の一つである。最後に、商売をやめるまで小規模企業共済を続けるか尋ねたところ、

「もちろん」

との答えが返ってきた。