掛金設定の自由さと
節税効果を実感する
小規模企業共済

ヘアーサロンJ 軸丸 智 氏

理容士の軸丸氏は、昭和40年代から続く実家の理髪店を2代目として2015年に引き継ぎました。ご両親と同じ理容師の道へ進むことは幼少期から決めていた。奥様も理容師で、理容学校の同級生でもある。小規模企業共済にはもともとご両親が加入していて、軸丸氏は2020年に加入。節税効果が高い点などメリットを実感し、今後は一緒に働く奥様も加入するか検討中である。

小規模企業共済を知ったきっかけは両親から

子どもの頃から両親のような理容師になることを決めていたと語る軸丸氏。理容学校を卒業後は、ご両親と3人で理髪店の仕事に従事している。そのような軸丸氏に小規模企業共済を知ったきっかけについて尋ねてみた。

「両親が入っていたので知りました。家業は退職金がないので、退職金に代わる制度はないのだろうかと思って父から話を聞いたのがきっかけです。母も加入していました。」(軸丸氏)

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための積み立てによる退職金制度である。会社が解散したときや、個人事業主が廃業したときに共済金が受け取れる。

軸丸氏は、同級生の仲間も小規模企業共済に加入しているが、掛金を上限にしているため、その控除額の大きさに驚いたとのこと。7万円の上限を掛けるにはお金に余裕がないと難しいが、所得税の控除があるので賢いなと思ったそうだ。

ただし、軸丸氏は小規模企業共済のことを知ってもすぐには加入にいたらなかった。加入を決めたのは、青色申告会からの助言が大きかったとのことである。

「親から店を引き継いで、確定申告は青色申告会でやっているのですが、小規模企業共済は所得控除があるのと、積立したお金が将来の退職金になりますよと勧められました。」(軸丸氏)

青色申告会とは、個人事業主の記帳や決算・申告の相談などに乗ってくれる団体である。軸丸氏の場合、ご両親から事業を引き継いだときに自分も小規模企業共済に加入しようとはならなかったが、加入すれば税制メリットがあると青色申告会から助言をもらったことがきっかけで、加入を決めたそうだ。

銀行に預金しても利息がつかないので比較したサービスはなし

個人事業主が老後資金を貯めるには、小規模企業共済の他にiDeCoや国民年金付加年金、国民年金基金などを活用できる。どのサービスを利用するか比較したり、2つ以上のサービスを併用したりする方もいる。軸丸氏に小規模企業共済に加入する際、ほかに比較したサービスや制度があるか尋ねてみた。

「比較はしていません。それこそ銀行に入れても利息がつかないですからね。特にほかの商品と比較したっていうことはないです。」(軸丸氏)

軸丸氏はほかのサービスと比較することなく、小規模企業共済に加入したとのことだ。銀行に預金しても利息はわずかなので、小規模企業共済に加入して節税しながら将来のために積み立てすることに魅力を感じたようだ。ご両親が加入していたこともあり、加入前から小規模企業共済について長く認知していた軸丸氏であるが、ご自身が加入するにあたってハードルや不安感がなかったか尋ねてみると次のような答えが返ってきた。

「国の機関が運営しているので心配はありませんでした。親が加入していたこともあって不安もなかったです。どのくらいの掛金を設定するかは悩むポイントだと思いますが、掛金はフレキシブルに変更できるので安心です。今はネットから増額したり減額したりできるみたいですし。」(軸丸氏)

小規模企業共済は、国の機関である中小機構が運営している。軸丸氏のように国の機関が運営していることに安心感を抱く方が多く、令和5年3月末現在の加入者数は約162万人にのぼる。

また、軸丸氏の言葉どおり、小規模企業共済の掛金変更は、つい最近オンラインでもできるようになった。掛金の増額や減額が簡単にできるところは小規模企業共済の特徴ともいえるメリットであるが、オンラインで手続きできるようになり、さらに掛金の変更手続きが簡単になった。

小規模企業共済の掛金は、1,000円から7万円まで500円単位でフレキシブルに選べるため、自分にとって無理のない金額で将来のために積み立てできる。もちろん月々の掛金が高い方が将来受け取れる共済金の金額が高い。掛金は全額が所得控除されるため、掛金が多いとより高い節税効果が得られる。しかし、事業には波もあるため、最初に設定した掛金を将来払い込むことが難しくなる可能性もある。その場合でも、小規模企業共済は掛金を1,000円まで減額できる。

掛金は、事業に余裕が出てきた段階で元に戻したり、増額したりすればいい。状況に合わせて自由に変更可能だ。

「決まった額じゃなくて自分で設定できるところがいいですよ。これだけ払わなきゃダメだってなるとちょっと厳しいですけど。」(軸丸氏)

掛金が所得控除されることに大きなメリットを感じる

ご両親が小規模企業共済に加入していたことで、ある程度小規模企業共済のことを認知していた軸丸氏であるが、実際に加入してどのようなことにメリットを感じているか尋ねてみた。

「掛金が控除されることが大きいです。調べてみるとメリットしかありません。」(軸丸氏)

小規模企業共済は、掛金の全額が所得控除されることが大きなメリットである。節税しながら将来のための貯蓄ができる。しかも受け取るときにも税制上のメリットがある。共済金を一括で受け取ればサラリーマンと同様に退職所得扱い、分割で受け取れば公的年金等の雑所得扱いになる。

個人や家族で事業を営む場合、定年がないので働ける限り働く方が多い。小規模企業共済には満期がないが、事業をやめなくても共済金がもらえるケースがある。個人事業主も、法人の役員も、年齢が65歳以上で掛金を180か月(15年)以上納付し続けると共済金Bの老齢給付がもらえる。70歳や80歳まで仕事を続ける場合、辞めるときまで共済金を受け取れないのではないかと思う方がいるかもしれないが、そういうわけではないので安心だ。

また、小規模企業共済にはいざというときの貸付制度もある。掛金の範囲内で借り入れできる制度のため、設備が壊れて修繕が必要になったときなど、急な出費のときに低金利で借り入れが可能だ。いざ必要になったときに活用できる安心感がある。

オンラインで掛金を変更できるのは便利

小規模企業共済では、2023年9月から一部手続きのオンライン受付を開始した。オンラインによる全面的なサービスの提供はまだ先であるが、新規申し込みや掛金の増額・減額などはオンラインで手続きできる。ご自身が加入される際にオンライン受付があったら利用していたか軸丸氏に尋ねてみた。

「加入のときは難しいので、申告会がサポートしてくれるのはありがたかった。自分から探しにいくのは難しかったかもしれない。でも加入した後に掛金をオンラインで変更できるのは便利ですよね。」(軸丸氏)

最初は勧めてもらった方が入りやすいが、入ってみると書類でやり取りするよりオンラインで完結できる方が便利だということである。加入前の手続きは、どこで書類をもらえばいいかとか、どこに提出すればいいのかなど迷う方もいるだろう。説明を聞きながら検討したい方もいるに違いない。そのような方は、従来通りの書類を提出する方法を選んだ方が安心して手続きできるだろう。

一方、パソコンを使い慣れている方や、書類での手続きが面倒に感じる方にはオンラインでの申し込みが向いている。このたび、申し込み方法の選択肢が2つになったため、都合のいい方法を選べる。

貯金するよりいいし、投資のリスクがないので安心

個人で事業をされている方の中には、小規模企業共済のことを知らない方もいるだろう。小規模企業共済を知らない方や、考えていない周りの方に対して、どのような言葉でお勧めされるか軸丸氏に聞いてみた。

「貯金するよりいいと思います。控除が大きいことを伝えたいです。あとは投資のようなリスクがないところも安心です。利率は1%なので、金融機関と比較したら大きいですよね。」(軸丸氏)

小規模企業共済の掛金は全額が所得控除の対象のため、節税しながら貯蓄できる。退職金制度でもあることから任意解約しなければまとまったお金を受け取れるため、将来に向けての安心感がある。予定利率は1%なため、金融機関に比べて資金を増やせることも大きなメリットだ。

「今はもっと早く掛けておけばよかったなと思っています。何年か早くても違いますし、店を引き継いだ段階で始めればよかったというのが今の気持ちです。」(軸丸氏)

軸丸氏のように、事業を始めてから小規模企業共済を知っても、すぐには加入しない方もいる。理由はさまざまだが、売上が安定してから入りたいと考える方が多いかもしれない。小規模企業共済には満期がなく、6か月以上掛金を納付すれば共済金を受け取れる。

しかし、長く継続した方が有利になるため、無理のない金額で長く続けることがベストだ。最初は掛金を少額からでも始めて、事業が軌道に乗ってから掛金を増額するのもよいだろう。

ご夫婦で加入していたご両親のように、今後は一緒に働く奥様の加入も検討したいと軸丸氏。

「皆さん入ればいいですよね。今後はがんばって掛金を増額したい」(軸丸氏)

小規模企業共済に加入して、掛金を所得控除できることに大きなメリットを感じているという軸丸氏。今後は奥様の加入や掛金の増額なども検討しているということだ。小規模企業共済は自分で選んだ額の掛金でスタートできて、状況に合わせて増額や減額できるため、長期間にわたって継続しやすい。掛金の変更はオンラインでできるため、パソコンに慣れている方であれば、面倒な手間なく手続きが可能である。まずは無理のない掛金で積み立てを始めよう。