小規模企業共済は
安定的に積み立てられるから
勧めたい

フリーランスエンジニア 鈴木 敬三 氏

鈴木氏はフリーランスのシステムエンジニアで、企業のシステム開発、設計、システム導入に関する相談などに携わっている。新卒でシステム会社に入社し、約8年勤務した後、フリーランスとして開業したのが約10年前。一度正社員に戻った時期があるものの、再びフリーランスとして活動を再開。小規模企業共済に加入したのは、2度目のフリーランスになってからである。

小規模企業共済を知ったきっかけは周りの同業者から聞いて

鈴木氏が小規模企業共済に加入したのは、正社員の時期を挟んで2回目のフリーランスとして仕事を始めてからとのこと。小規模企業共済を知ったきっかけを尋ねてみた。

「同業のフリーランスエンジニアや正社員で副業をしている人たちと、貯蓄や資産運用の話になり、小規模企業共済のことを聞いたのがきっかけです。iDeCoやNISAなどと同じ感じで単語は知っているけど、実際どういうものなのかは全然知りませんでした。年金みたいなものなのかなと思いました。」(鈴木氏)

中小機構や税理士から小規模企業共済を知る方が多いが、鈴木氏は知人から聞いたことがきっかけだった。周りに同業の方がいたことで、小規模企業共済を知ることになったそうだ。

小規模企業共済を知り、どういうタイミングで検討するに至ったのか質問すると、鈴木氏は当時をこう振り返った。

「当時、ある程度売り上げが安定してきて、貯金がどんどん貯まる状況になっていました。家を買うなど大きな買い物の予定もなかったので、資産運用を考えようかなと思って検討しました。」(鈴木氏)

事業が軌道に乗り、売り上げが安定してきたタイミングで小規模企業共済への加入を検討したとのことだった。

小規模企業共済は、月額の掛金は1,000円から加入が可能な上、掛金の減額や増額が簡単にできる。立ち上げ当初など経営状況がまだ軌道に乗っていないときなどは、掛金を最低金額の1,000円に設定し、売り上げが安定してきたら、掛金を増額すればいいため、最初のうちから可能な掛金で加入し長く継続していくのが一番効果的である。

なかなか事業を始めたての際はそのような余裕がないケースが多いかもしれないが、鈴木氏も後にこのことに気付き、もっと早くから始めておけば良かったと仰っていた。

小規模企業共済より先にiDeCoに加入

退職金がないフリーランスが老後の資金を形成できる制度は、小規模企業共済だけではない。小規模企業共済に加入するにあたって、ほかのサービスと比較したのか鈴木氏に尋ねてみた。

「僕はiDeCoにも入っていて、加入した順番はiDeCoの方が先です。それでもうちょっと余裕があったので、小規模企業共済に入りました。その後、NISAにも入っています。iDeCoやNISAは掛金が増えているか減っているかをチェックしてニヤニヤするようなこともありますが、小規模企業共済は順当に貯まっているという安心感があるところが、ほかのサービスとの違いに思えます。」(鈴木氏)

小規模企業共済の他にiDeCoやNISAにも加入している鈴木氏。小規模企業共済には蓄えとしての安心感を抱いているという。

自分で運用する必要のあるiDeCoやNISAと異なり、小規模企業共済は国の機関である中小機構が運用しているため、忙しいフリーランスの方が事業に集中できる点も大きい。

加入して感じたメリットは節税対策が大きい

鈴木氏は小規模企業共済に加入して約3年になるが、加入してどのようなメリットを感じているか尋ねてみた。

「やはり節税対策になる点が大きなメリットだと感じています。いつまで働くかも決めていないし、逆にいつ仕事がなくなるかもわからないので、将来のために積み立てができてありがたいです。国の機関である中小機構が運営しているので、破綻することはないだろうという安心感があります。」(鈴木氏)

小規模企業共済の掛金は確定申告で全額所得控除されるため、節税しながら将来のために積み立てできる。会社員や公務員は退職時に退職金が支給されることが多いが、個人事業主の場合は自分で廃業後に備えて蓄えておく必要がある。小規模企業共済は節税しながら将来に備えられるので安心だ。

加えて小規模企業共済は、加入者が掛金の範囲内で利用できる低金利の貸付制度もある。事業を継続していく上で、借り入れが可能な制度があるのは安心感があるか鈴木氏に尋ねてみた。

「今のところは特に必要としていませんが、今後気が変わってやっぱり法人化しようと思ったときや、人を雇うことになったときに、借り入れできる制度があるのはありがたいのではないかと思います。」(鈴木氏)

また、小規模企業共済は2023年9月1日よりオンライン受付を開始した。オンラインによる全面的なサービスの提供は2025年内の開始を予定しているが、「新規加入」「掛金月額の増額・減額」「掛金の一括納付」など、特に要望の多い手続きには2023年9月から対応をスタートしている。オンライン受付がご自身の加入時にあった場合、使用していたか鈴木氏に尋ねてみた。

「やっぱりオンラインでできた方が楽だし、そういうのもハードルの一つでした。加入するための書類をどこでもらえばいいんだろうといったことがあるので。僕はネットで調べて必要書類の送付依頼を行い、銀行の窓口に提出しました。オンラインで申し込みできたら、もっと入りやすくなるだろうなと思います。」(鈴木氏)

小規模企業共済を加入していない人には勧めたい

小規模企業共済は小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための積み立て制度であるが、加入資格があっても小規模企業共済のことを知らない方もいるだろう。また、知っていても加入を迷っている方もいるかもしれない。小規模企業共済を知らない方や考えていない方がいたら、どういう言葉でお勧めするか鈴木氏に尋ねてみた。

「小規模企業共済は安定的に積み立てができて節税効果も大きいので、加入をお勧めします。」(鈴木氏)

フリーランス仲間では、あまりお金周りの話をしないという鈴木氏。しかし、節税の話になると小規模企業共済やiDeCo、NISAの話が出てくることもある。仲間内の会話で話題に上がると知り合いが入っている安心感があり、鈴木氏自身も入っていいのだなと思いながら聞いていたという。

最後に、初めて開業したときに小規模企業共済に目がいかなかった理由について聞いてみると、次のような答えが返ってきた。

「結局、年間を通してどういうところにお金がかかり、税金はいくら払えばいいかなど、確定申告してみないとわからない。1年目、2年目とやっていって、税金を結構払わなくてはいけないなとなったときに、初めて節税を考えるようになりました。自分の売り上げがどのくらいで、そこから経費がどれくらいかかり、所得がいくらになるなど、そういうのを知ってからじゃないと加入しようというモチベーションが湧きませんでした。」(鈴木氏)

長く入った方がお得と伝われば1,000円からでも入る人が増えそう

小規模企業共済に加入するにあたって、掛金をいくらにするかに目がいくと、加入するタイミングが遅くなるかもしれない。売り上げが安定して、余裕が出てから加入しようと考える方も多いだろう。

小規模企業共済は毎月の掛金を全額所得控除できるが、共済金を受け取るときも税制上の優遇がある。共済金を一括で受け取る場合はサラリーマンと同様に退職所得、分割で受け取る場合は雑所得(公的年金)の扱いになる。小規模企業共済は先の長い制度で満期が設けられていない。一括で受け取る時の退職控除の金額を考えると、できるだけ長く加入していた方が有利である。

退職所得の場合、退職所得控除額を差し引いた金額に2分の1をかけた金額に対して税金がかかる。控除額は勤続年数20年までが1年につき40万円だが、21年からは「800万円+(勤続年数-20年)×70万円」の計算式で算出した金額が控除される。

小規模企業共済は、掛金月額1,000円でもいいので早めに加入しておくことで納付年数を長くすることができる。経営に余裕が出て、掛金を上げると節税効果が高くなり、将来受け取れる共済金の金額も増える。

「掛金が1,000円だと30年貯めようが40年貯めようが大した額にならないみたいに思えますが、掛金を変えるのは当たり前みたいになれば、とりあえず1,000円でも入っておこうかなという人が増えるかもしれないですね。ずっと1,000円のままだと大した金額にはならないけど、ある程度余裕が出たときに掛金を増やせばいいことや、掛金の払い込みが長ければ長いほど有利だよというのが伝われば、加入する人が増えそうな気がします。あとは、掛金の変更が簡単にできるので加入のハードルが下がると思うんですけど。」(鈴木氏)

小規模企業共済は先日オンライン受付を開始し、掛金の増減もオンラインで簡単にできるようになった。マイナンバーカードによる本人認証が必要だが、加入者ご自身のパソコンやスマホで手軽に手続きできるため、掛金の増額も減額もしやすくなり、加入のハードルが下がったと思われる。

例えば、事業が軌道に乗るまでは掛金を1,000円にして、余裕が出てきたら掛金を増額することがパソコンから簡単にできる。反対に経営状況が苦しいときは掛金を1,000円に減額し、余裕が出てきたときに掛金を元に戻すようにすれば、無理なく長く続けられるだろう。

もちろん今まで通り書類で申し込むことも可能だ。新規申し込みや掛金変更を手続きする際の選択肢が増えたので、都合がよい方法で申し込もう。